解散命令請求に関する会社法の規定

宗教法人の解散命令の請求については、宗教法人法第81条に記載があります。
それでは、他の種類の法人の解散命令の請求については、どのように記載があるのでしょうか。

最も一般的な法人である会社について、解散命令請求については、会社法に規定があります。その要件としては、下記があげられています。(会社法第824条第1項第3号)
①業務執行取締役、執行役又は業務を執行する社員が、法令若しくは定款で定める会社の権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした場合において、
②法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反覆して当該行為をしたとき。
つまり、組織性においては代表者等によるもの、悪質性においては刑事事件等、継続性においては警告を受けても改善しないことなどが、規定されています。

しかし宗教法人法では、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(第81条第1項第1号)、「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」(第81条第1項第2号)と記載されているだけで、代表者による刑事事件や書面警告などの記載がありません。運転免許で言えば「一発免許取り消し」です。
信教の自由の侵害の恐れがある宗教法人が、そうでない一般的な会社よりも、解散命令請求の要件が緩いわけで、この点については、もともと法律間の整合性に問題があるのです。

従って、宗教法人法上の解散命令請求については、運用側に、より慎重な態度が求められます。そのため、裁判所は、過去の解散命令請求に関する理由書の中で、下記のように判示しています。
「右規定にいう「宗教法人について」の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(1号)、「2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」(2号前段)とは、宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえるうえ、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって、しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、又は宗教法人法2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為をいうものと解するのが相当である。」(東京高裁抗告審決定(平成7年(ラ)1331号) 第三/一/1 解散命令の意義)
https://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~suga/hanrei/141-2.html
「宗教法人の代表役員等」が、「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反」と、明確に要件を定めたわけです。

ところが、2022年10月18日、岸田首相はこの見解を引っ繰り返し、解散命令請求の要件として、「民法の不法行為も入り得る」としてしまいました。
https://mainichi.jp/articles/20221019/k00/00m/010/027000c

憲法20条に定める信教の自由の侵害の恐れがある宗教法人解散の要件が、一般の会社よりも軽いという法律の不整合性は、明らかに問題です。どうしてこのようなことが起きるかと言えば、一国の首相が、家庭連合解散ありきで、物事を判断してしまったからです。
文部科学省による解散命令請求は、一つの宗教法人を消滅させる国家の行為であり、他の宗教法人にも波及する問題です。国家による宗教弾圧に対しては、断固反対いたします。