解散命令請求が「信教の自由」の侵害である根拠

家庭連合に関する文部科学省の解散命令請求は、信教の自由を侵害しています。その根拠を、下記致します。

1. 宗教法人法第一項の要件について

(1) 第一号「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」
ここでの「法令」について、10月19日に岸田首相は、民法の不法行為も含まれるとし、その際の要件として、「組織性」「悪質性」「継続性」の3つをあげました。
https://www.asahi.com/articles/ASQBM3GFRQBMUTFK002.html

それ以降、文部科学省は宗教法人法第78条の2に基づき、7回の質問権を行使し、家庭連合は質問に回答すると共に、民法上の不法行為においても組織性、悪質性、継続性がないことを示してきました。

それに対して文部科学省は、2023年10月13日の盛山文部科学大臣の解散命令請求に際しての記者会見(以下、記者会見と言います)において、「組織性」、「悪質性」、「継続性」の3要件について、その基準はどのように定められ、どの事案がどのようにその基準に該当するかを示すどころか、3要件の文言にすら触れていません。(記者会見にて配布された資料参照、以下配布文書)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/pdf/93975301_01.pdf

また、禁止規範、命令規範が、解散という罰則を伴うものであれば、それは罪刑法定主義に基づくべきであり、①罪に該当する具体的な行為とそれに対する罰を明確にすることと、②それを遡及させないことが、大原則です。
ところが配布文書には、具体的にどの行為がどの法律に違反するのか示しておらず、不法行為の一般規程である民法第709条(不法行為)及び第715条(使用者責任)を示しているに過ぎません。
そして、記者会見にて指摘された事案は過去のものであって既に決着されているにも関わらず、全て遡及させて解散命令請求の要件としています。統一教会(当時)は2009年にコンプライアンス宣言を行い、それ以降事案は急激に減少していることからも、民法を根拠とした解散命令の必要性は認められません。

更には、この中で触れられた、169名の民事裁判は、約半数が拉致監禁による強制棄教による脱会者です。拉致監禁は犯罪行為であり、それによる脱会者の民事裁判は、その延長線上にあると言えます。不法行為について議論するのであれば、4300件以上の拉致監禁の事実についても言及すべきですが、それが行われていません。

(2)第二号「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」
二号違反については、配布文書において、「宗教法人は公益法人である」という概念を持ち込みました。確かに宗教法人は公益性があり、税制面での優遇性を受けています。そして文部科学省は、家庭連合は宗教の目的を逸脱して公益性が認められないとしています。しかし、それは「解散」の要件にはなり得ません。

例えば、公益社団法人において公益性が認められない場合は、一般社団法人となり、税制面の優遇措置は認められなくなりますが、それは解散ではなく、手続き上は単なる商号変更です。
宗教法人の場合、税制面での優遇措置が一切認められない一般宗教法人なるものは存在しませんが、それならば当該宗教法人の事業を課税対象にすればよいのです。宗教法人の設立認可を受ける際には規則を定めますが、その中に事業が列挙されます。税制上免税となるのは、あくまで宗教行為のみであって、収益事業については34種類が指定されていて、それは課税対象となります。例えば、物品販売事業や出版事業などです。(国税庁の下記資料P12参照)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/r06_shukyo.pdf

百歩譲って家庭連合の全ての事業に公益性がないとしても、単に全事業に課税すれば済む話であって、解散させる必要はありません。つまり、公益性がないということは、解散要件には当たらないのです。

2. 解散命令請求において、家庭連合の意見を聴取していないこと

家庭連合の解散命令請求にあたっては、文部科学省は、家庭連合の意見を全く聴取していません。家庭連合に対して質問権を行使しましたが、それは文部科学省が質問したことに対してのみ回答するだけであり、一方的です。最後には回答は不十分であるとして、過料通知まで行いました。

家庭連合の信者に対しても一切ヒアリングはありません。家庭連合有志は、2022年12月に2万3千通、2023年10月に5万3千通の解散命令請求に反対する嘆願書を文部科学省に提出しましたが、手渡しを拒否され郵送となりました。つまり、文部科学省には、家庭連合の言い分を聞く姿勢は皆無です。

宗教法人の解散は、自然人で言えば死刑に相当します。死刑であれば、被告は公開の場で言い分を主張し、審議される権利があります。しかし今回の解散命令請求は、解散命令請求までのプロセスは全て非公開で、家庭連合には主張の場が与えられていません。裁判も非訟事件手続法に基づいて行われるため、これも非公開で行われます。先日東京地方裁判所による審問の場がありましたが、その内容も非公開です。

即ち、公の場での議論の場が一切ないままで、一つの宗教法人が解散に追い込まれるということが、現在行われているのです。これは、刑事事件においては公開の場での裁判を受ける権利を定めた憲法第37条の趣旨に反するものです。

今回の解散命令請求は、家庭連合の解散ありきで進められたことは、否定しようがない事実です。これは明らかに国家による特定の宗教団体に対する迫害であり、他の宗教法人においても起きうることです。

私たちは、家庭連合を守るために「信仰の自由と人権」侵害を訴えているのではありません。家庭連合に解散命令請求が出されることにより、全ての宗教団体に対して解散命令請求がいつでも出されてしまう危険性があることを訴えているのです。